アメリカ出身の女流印象主義の画家メアリー・カサットの代表的な作品のひとつ『オペラ座の黒衣の女(オペラ座にて)』。
本作に描かれるのは、当時の女性らが最も華やかに映える場所のひとつであった劇場でオペラを鑑賞する女性で、カサットが本作を手がける5年前(1874年)に印象派の巨匠ルノワールが『桟敷席』として本画題を描いており、しばしば『桟敷席』との関連性や対照性が指摘されている。
ルノワールの『桟敷席』に描かれるオペラを鑑賞する女性は、胸元に薔薇が一輪添えられる白と黒の華やかな装いで画面を観る者に視線を向けているのに対し、本作でオペラを鑑賞する女性は、性別的強調の少ない(又は皆無な)黒衣に身を包み、一心に舞台上へと視線を向けている。
また黒衣の女性が左手で握り締める扇は固く閉じられており、女性の優美さや華やかさを演出する道具としては全くその役割を果たしていない。
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